新学術領域研「植物多能性幹細胞」

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領域概要

領域及び計画研究の具体的な達成目標

本領域の達成目標は、幹細胞の増殖や新生の時空間的制御、および幹細胞の多能性やゲノム恒常性を維持する機構を解明し、植物発生に永続性をもたらす制御システムを理解することです。そして、植物分野に幹細胞生物学を創成し、幹細胞の多能性を支える制御系に関して概念的ブレークスルーをもたらすことを目指します。
動物の多能性幹細胞は受精後間もなく消滅するため、これまではin vivoで多能性が消失するのがデフォルトと考えられてきました。また、体細胞のリプログラミングが起きにくいのも、特段に奇異な性質として捉えられてきませんでした。しかし、植物では幹細胞が永続的に多能性を維持し、リプログラミングによる幹細胞新生も容易に起こります。したがって、in vivoにおける幹細胞の特性を理解する上で、動物の幹細胞のみの知見からモデルを一般化し議論するのは適切ではないと考えられます。

本領域が目指す、植物分野における幹細胞生物学の創成は、幹細胞の多能性や増殖性を理解する上で新たな概念を提示し、動植物の枠を超えて生物学分野全般にパラダイムシフトを起こす、重要な契機になると考えています。

本領域では、これまで決定的に欠けていた植物幹細胞に関する情報を効率的に取得し、多能性幹細胞の動作原理を格段に高次なレベルで解明することを目指します。これにより、生命の永続性を本質的に理解するための研究基盤を構築し、幹細胞制御系を軸として生存システムを記述し改変するような、新たな研究潮流を生み出したいと考えています。

 

概要

計画研究は8つの研究グループで構成され、2つの研究項目にそれぞれ4グループが参画しています。

研究項目A01「幹細胞増殖」(五島、林、榊原、山口)では、幹細胞集団を規則的に産生し、体中に拡散させ、モジュール性をもった形態を生み出す制御システムについて理解します。そのために、植物幹細胞の新生・維持に必要な非対称分裂の仕組みや、分化した細胞から幹細胞を新生するリプログラミングの機構について解析し、幹細胞生成に必要なマシナリーや転写制御ネットワーク、クロマチン構造制御などを明らかにします。また、幹細胞分裂を制御する植物ホルモンの生合成・輸送システム、および幹細胞新生のタイミングを制御するシグナル分子を明らかにし、幹細胞を生み出す時空間的制御系を解明します。

研究項目A02「幹細胞性維持」(経塚、鳥居、梅田、佐竹)では、幹細胞の多能性とゲノム恒常性を維持し、永続的な器官発生を可能にする制御システムについて理解します。恒久的幹細胞と一過的幹細胞を併せもつ植物の特徴を存分に利用し、幹細胞の多能性を維持する分子機構の解明を目指します。また、ゲノムの安定保持機構を明らかにするとともに、幹細胞のゲノム変異を許容し、積極的に多様性を創出する機構についても解析します。
計画研究で補いきれない部分は2年目と4年目から始まる公募研究で行い、計画研究と有機的な連携を組むことにより、領域研究の推進に貢献します。

以上のような研究を推進するにあたり、植物幹細胞の特性解析を集中的に行い、その情報を全メンバーで共有する体制が不可欠です。そこで、総括班に植物幹細胞解析センター(Plant Stem Cell Analysis Center, PSAC)を設け、植物幹細胞をターゲットとした1細胞解析(トランスクリプトーム・エピゲノム)および3Dイメージング解析を行います。そして、両者を統合したデータベースを構築し、領域内で共有します。

 

研究テーマ

A01:幹細胞増殖

  • 植物幹細胞の新生・維持に必要な非対称分裂機構の解明
  • リプログラミングによる植物幹細胞の新生機構の解明
  • 幹細胞増殖を制御する植物ホルモンの機能解明
  • 幹細胞新生のタイミングを制御する分子機構の解明

A02:幹細胞性維持

  • 植物幹細胞の多能性を維持するメカニズムの解明
  • 植物幹細胞の一過性と永続性を制御する分子メカニズムの解明
  • 多能性幹細胞の維持・再生機構の解明
  • 長寿命樹木にみられる幹細胞ゲノムの多様性分析